「病院で働く看護師に興味がある」「人の役に立つ仕事に就きたいけれど、看護師って実際にどんなことをしているのだろう」――そう考えたことはありませんか?看護師は、病気や怪我で苦しむ人々のそばに寄り添い、治療のサポートから日常生活のケアまで、幅広い役割を担う専門職です。
この記事では、看護師の役割や具体的な業務内容、必要とされる資格や資質、働くことができる施設の種類、勤務形態や待遇、さらにこの分野で働くための一般的な方法について、客観的な事実に基づいて解説していきます。後半ではよくある質問にもお答えしますので、進路やキャリアチェンジの参考にしてください。
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看護師とはどのような仕事か
看護師は、医師の指示のもと、患者の診療補助や療養上の世話を行う医療従事者です。病院や診療所だけでなく、高齢者施設や訪問看護ステーションなど、活躍の場は広がっています。
看護師の役割は時代とともに変化しており、単に病気の治療をサポートするだけでなく、患者の心のケアや生活の質を維持するための支援も重要な仕事です。特に近年は、国際化に伴い、日本に住む外国人が適切な医療を受けられるよう、言葉や文化、習慣への理解を踏まえた対応も求められています。
看護師が活躍する主な施設
看護師の活躍の場は、多岐にわたります。
- 病院(総合病院・大学病院・専門病院など):最も一般的な勤務先です。外来、病棟、手術室、集中治療室など、さまざまな部署で専門性の高い看護を提供します。例えば、帝京大学病院のように大学に隣接する病院では、最新の医療現場で実践的な経験を積むことができます。
- 診療所・クリニック:地域のかかりつけ医として、外来患者のケアや健康相談、予防接種などを行います。病院に比べて勤務時間が規則的な場合が多いです。
- 訪問看護ステーション:自宅で療養する患者のもとを訪問し、医療処置や生活のサポートを行います。患者の自立した生活を支える役割を担います。
- 介護老人保健施設・特別養護老人ホーム:高齢者の日常生活のケアとともに、医療的なニーズにも対応します。
- 保健所・保健センター:公衆衛生の観点から、地域住民の健康維持・増進のための活動を行います。保健師として別途資格が必要な場合もあります。
- 企業・学校:産業看護師や学校看護師(養護教諭)として、従業員や生徒の健康管理を行います。帝京大学では、看護学科のカリキュラムの中で養護教諭一種免許状の取得が可能です。
看護師の一日の仕事の流れ
勤務先や部署によって大きく異なりますが、ここでは一般的な病棟での一日の流れを二交代制の場合で見ていきましょう。
日勤の場合:
- 8:30 出勤・申し送り:夜勤の看護師から、患者一人ひとりの状態(バイタルサイン、食事・排泄の状況、検査予定など)について詳しい引継ぎを受けます。
- 9:00 清掃・環境整備:病室やナースステーションを清潔に保ちます。
- 10:00 検温・配薬:患者の体温や血圧を測定し、医師の指示に基づいて薬を配ります。服薬の際は、患者さんにお名前を確認するなど、誤薬防止に細心の注意を払います。
- 11:00 点滴・処置の介助:医師の処置に同行したり、点滴の交換などを行います。
- 12:00 食事介助:食事の取れない患者さんに食事の介助を行います。日本の病院では、一食ごとに三〜四十種類もの献立の中から選べる施設もあり、患者さんの満足度を高める工夫がされています。
- 13:00 カルテ記載・検査対応:午前中のケアの記録をまとめ、午後の検査に備えます。患者さんの検査に付き添うこともあります。
- 15:00 入浴介助・清拭:患者さんの身体を清潔に保つためのケアを行います。行動が不自由な患者さんには、臥式浴槽などの機械を使っての入浴介助も行います。
- 16:30 申し送り・業務終了:準夜勤の看護師に患者の状態を引き継ぎ、一日の業務を終えます。
夜勤の場合:
- 16:30 出勤・申し送り
- 18:00 夕食介助:日勤帯に引き続き、患者さんの食事ケアを行います。
- 20:00 就寝準備:患者さんが安心して眠れるよう、環境を整えます。
- 22:00 巡回:睡眠中の患者さんの状態を確認します。点滴が外れていないか、呼吸は安定しているかなど、注意深く観察します。
- 0:30 仮眠:施設によっては仮眠時間が設けられています。看護師の疲労やパフォーマンス維持のための仮眠の取り方については、研究が進められている分野です。
- 5:00 早朝の業務開始:検温や採血、朝の準備を始めます。
- 8:30 申し送り・業務終了:日勤の看護師に引き継ぎをして、夜勤明けとなります。
必要とされる資格と資質
必要な資格
看護師として働くためには、「看護師国家試験」に合格し、厚生労働省の看護師名簿に登録することが必須です。国家試験を受けるためには、看護師養成学校(看護専門学校)や看護系大学で3〜4年間学び、カリキュラムを修了する必要があります。
さらに専門性を高めるために、保健師や助産師の資格を取得する道もあります。帝京大学では、看護学科のカリキュラム内で、定員制ではあるものの保健師国家試験の受験資格を得ることもできます。また、日本医療科学大学でも、選択制で保健師課程を履修することが可能です。
求められる資質
看護師には、以下のような資質が求められます:
- 観察力と判断力:患者の些細な変化(顔色、表情、話し方、食事の量など)を見逃さない観察力が最も重要です。特に、言葉で不調を伝えられない患者さんや認知症の高齢者のケアでは、この能力が欠かせません。
- コミュニケーション能力:医師や他の看護師、理学療法士などの医療専門職と連携するためのチームワークが求められます。また、不安を抱える患者や家族に対して、丁寧に説明し、安心してもらえる対応力も必要です。
- 思いやりの心と倫理観:日本では、看護師は患者に対して尊称を用い、常に敬意を持って接することが一般的です。患者の人格を尊重し、プライバシーに配慮した対応が求められます。
- 体力と精神力:夜勤を含む不規則な勤務や、一日中立ち仕事・歩き回る業務に耐える体力が必要です。研究によると、看護師の勤務中の姿勢は、立位、歩行、前傾姿勢が大部分を占めています。また、緊急の場面や患者の死に立ち会うこともあり、精神的な強さも求められます。
- 管理能力・リーダーシップ:中堅看護師になると、後輩の指導やチームのまとめ役としての役割も期待されます。管理職向けのキャリアパスでは、傾聴力、協調性、調整・交渉力などが重要なコア能力として挙げられています。
労働環境と待遇
勤務形態
看護師の勤務形態は、主に二交代制と三交代制があります。
- 二交代制:日勤(8時30分〜17時頃)と夜勤(16時30分〜翌9時頃)の2つのシフトで構成されます。
- 三交代制:日勤、準夜勤(16時30分〜0時30分)、深夜勤(0時30分〜8時30分)の3つのシフトで構成されます。
交代制勤務による看護師の疲労については、さまざまな研究が行われています。2022年に発表された研究では、二交代制の場合、日勤の労働時間が9時間50分を超えると疲労が有意に高まることが示されています。また、夜勤の労働時間が17時間15分を超える場合や、夜勤回数が月8回を超える場合も疲労リスクが高まります。
三交代制の場合は、日勤の労働時間が9時間45分を超える場合、深夜勤務の回数が月2.9回を超える場合、そして日勤から夜勤への間隔が12時間以内になる回数が月2回を超える場合に、疲労が有意に高まることが分かっています。
また、勤務間のインターバルが短い場合(8時間程度の空きのみで次の勤務に入る場合)、看護師の睡眠不足が蓄積し、疲労感が増すことが報告されています。
給与・待遇
看護師の給与は、勤務先や地域、経験年数によって差があります。日本における看護師の収入は、一般的な職業と比較して中位以上とされています。
ある大学病院の例では、新卒看護師の初任給は月額約20〜25万円程度が相場です。夜勤手当や残業手当が別途加算されるため、経験を積むにつれて収入は上がっていきます。一般的な看護師の年収は、400万円〜600万円程度と言われています。
福利厚生としては、社会保険完備、制服貸与、資格取得支援制度、寮・社宅の完備などが整っている施設も多いです。日本では、看護師が仕事を続けやすいよう、院内保育所を設置している病院も増えています。
労働時間と休日
看護師の勤務は、週40時間が基本です。日本の国民の祝日は年間16日ありますが、病院は年中無休で稼働しているため、シフト制で休みを取得する形になります。完全週休二日制でなくとも、月に8〜10日程度の休みがある施設が一般的です。
日本の主な看護師の働く場・就職支援機関
看護師として働く場を探す際には、直接病院の採用情報を見るほかに、以下のような方法があります。
特色のある医療機関の例
- 帝京大学病院:東京都板橋区にある特定機能病院です。看護学科の学生が実習を行うだけでなく、新卒看護師の研修施設としても機能しています。大学病院ならではの高度な医療を学べる環境が整っています。
- 日本板橋医療グループ:東京に本部を置き、全国に100以上の病院・施設を持つ医療グループです。大規模グループならではの体系的な研修制度や、異動によるキャリア形成の機会があるのが特徴です。
- 京都・大阪地区の医療グループ:関西圏には、京都、大阪、奈良、神戸などに約40の病院を展開する医療グループがあります。地域密着型の医療を学びたい方に向いています。
- 広島大学:看護師の交代制勤務や疲労に関する研究を積極的に行っており、エビデンスに基づいた労働環境の改善に取り組んでいます。このような大学病院では、研究マインドを持った看護師として成長できる環境があります。
就職支援機関
- ハローワーク(公共職業安定所):全国のハローワークでは、病院やクリニック、高齢者施設など様々な求人情報を扱っています。看護師専門の窓口を設けているハローワークもあります。
- 各病院の採用情報:地域の総合病院や大学病院の公式ウェブサイトには、直接採用情報が掲載されることがあります。特にNICUや手術室など専門性の高い部署では、見学やインターンシップを実施している場合もあるので、問い合わせてみると良いでしょう。
キャリアパスと専門性の向上
看護師のキャリアパスは大きく分けて、以下の3つがあると言われています。
- 管理職コース:看護師長や看護部長など、組織をマネジメントする立場を目指します。必要なコア能力としては、傾聴力、協調性、調整・交渉力が挙げられます。
- 専門・認定看護師コース:がん看護、救急看護、感染管理など特定の分野で高度な知識・技術を持つ看護師を目指します。必要な能力としては、分析力、概念化能力、観察力が重要です。
- ジェネラリストコース:幅広い分野の知識を持ちながら、現場で看護を実践し続ける道です。協調性、専門知識、判断力がコア能力として求められます。
日本では、看護師の採用後、3年以内に病院の各科をローテーションし、幅広い看護の特徴を学ぶ研修制度を取っている施設もあります。新卒看護師の場合、正式採用までに22項目の基本技術操作の試験に合格する必要がある病院もあり、厳格な教育体制が整っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 看護師になるには、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 看護師になるための主なルートは3つあります。高校卒業後に看護系大学(4年間)に進学する方法、看護専門学校(3年間)に進学する方法、准看護師からステップアップする方法(2年+働きながら2年など)があります。いずれの場合も、卒業後に国家試験に合格する必要があります。
Q. 男性でも看護師になれますか?
A. なれます。近年は男性看護師も増えており、特に精神科や救急・集中治療の現場、手術室などで活躍しています。帝京大学の看護学科でも、男子学生が資格取得を目指して学んでいます。
Q. 夜勤は必ずしなければなりませんか?
A. 病院勤務の場合は、夜勤があるのが一般的です。しかし、診療所や訪問看護、高齢者施設、企業など、夜勤のない職場も選択できます。自分のライフスタイルや体調に合わせて、夜勤の有無は選べます。
Q. 看護師の離職率は高いと聞きますが、実際はどうですか?
A. 新卒看護師の離職率は、例年7〜8%程度で推移しています。夜勤を含む不規則な勤務や責任の重さが理由として挙げられますが、近年は病院側も新人研修の充実やメンタルサポート体制の強化に取り組んでいます。
Q. 向いている人はどんな人ですか?
A. 几帳面で正確な作業が得意な人、人の話を聞くのが好きな人、チームで協力して物事を進められる人に向いています。また、変化の激しい現場で柔軟に対応できる適応力も重要です。
Q. 看護師の仕事のやりがいは何ですか?
A. 患者さんが元気になって退院される姿を見送る時、「この仕事を選んで良かった」と感じる看護師は多いです。また、日々のケアを通じて患者さんや家族から直接「ありがとう」と言われる機会が多く、目に見える形で感謝を実感できる仕事です。
看護師は、人の命と健康に直接関わる、とても責任のある仕事です。不規則な勤務や体力的な大変さもありますが、その分、大きなやりがいを感じられる職業です。興味を持たれた方は、まずはお近くの看護学校のオープンキャンパスに参加したり、ハローワークで看護師の求人状況を調べてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考リンク:
- https://www.nims.ac.jp/e/faculty/nurse.html
- https://www.teikyo-u.ac.jp/en/faculties/medical_tech/qualification
- https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7609/ho3.pdf
- https://www.qqhryxyfsdryy.org.cn/2012/1225/c3614a74555/pagem.htm
- https://www.gzws.edu.cn/xqhzzx/ptjs1/content_15244
- https://www.gzws.edu.cn/xxxw/bmdt/content_17829
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje/50/6/50_359/_article/-char/ja/
- https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204664798720
- https://researchmap.jp/takemuray/published_papers/36541016
- https://jglobal.jst.go.jp/en/detail?JGLOBAL_ID=201201036282673612